女の浪費は美しく、男の浪費は醜く見える(のか?)

※劇団雌猫著『浪費図鑑−悪女たちのないしょ話−』(小学館)の感想文です。若干ですがネタバレあり。

もともとは「もぐもぐ」さんこと、この著者集団の一員であるH.Yさんに対する数年来の興味が最初のキッカケである。大学時代に書いたブログに感心することしきりで、あー新しい書き手が出てきたなー、こうやって自分の感性を直接世間に問うていく人がこれからフツーになるんだろうなー、とか思ったのを憶えている。とにかく面白いこと・楽しそうなことにどんどん首を突っ込んでいく感じが面白くも羨ましくもあった。

大学卒業後、彼女は某ネットメディアの営業〜記者を経て、現在は別の某ネットメディアで記者として働いているらしい。そんな彼女が一員となり“インターネットで言えない話”をコンセプトにした同人誌を作ってコミケに出すという。面白くない訳がない。とはいえそんなに売れることもなかろうし、コミケの後でどっかの店に出たら買おう…甘かった。コミケ即完、店舗分も秒殺。仕方ないのでネット通販で本体と同額くらいの送料がかかるのもアホらしいと送料無料にしたいがためにヴィレヴァン謎のかいまき布団みたいのといっしょにポチった(これも浪費である)。デカい段ボールが届き、ドキドキしながらページを開けた…読めない(苦笑)小さくて細(くて薄)いフォントの前に呆然とした。100均で虫めがねを買って頑張ったけど実は現在も読破できてない。49年半裸眼で生きてきたのでそういうのに適したルーペ類とか知らんかったのだ、勤務先のショーウィンドウで見るまでは(因みに拡大されてたのは藤井4段関連の新聞記事だった)。

同人誌とかいう割には多くの人の手に渡り、菊地成孔氏澤部渡(スカート)氏も絶賛したらしい。そしてなんと「商業書籍が出ます!」という。そりゃ買わんわけにはいかんでしょう。あの読みにくさも改善されるだろうし。勤務先のビル内にある書店にamazonのページを見せて注文した(社員証を見せれば5%引き)。店員さんが書名をメモるのに難儀している風だったのでISBNコードの画面を出したらえらくありがたがられた…オススメです。

発売前重版が決定してしまいました!!!」なんて景気のいい話もタイムラインに流れてきつつの発売日、の2日後に入荷。「やっぱ“メジャー”は違うなー」というのが第一印象。そう、これを買ったのは「インディーズ(自主出版)本が口コミで評判になりメジャー(出版社発行)デビューする」瞬間を体感するという目的もあるのだ。イラストはカラフルになり、ケケ中先生のインタビューもあり、そして何より読みやすい(笑)。フォント大きくて太くて助かるわー。かくしてサクサクと読み進む。冒頭から“あんスタで課金マウンティング”“親に借金してまで刀剣乱舞の同人誌を買い漁る”“推しメンにビザが下りなかったEXOダラス公演に行く”“ミッキー撮りたさで一眼買った年パス持ち”“バンギャル(行動形態が既視感だらけ←)”などなど畳みかけてくる。そして本編のトドメは“触ってもらってついでにキレイになりたい(マッサージ→ヘッドスパ→タッチアップ)”ときたもんだ。頭痛が痛い(物理的にではなく感覚として)。そして押し寄せてくる既視感に思う。こんなんウチの知り合いに山のようにおるわ(本人含む)!性別と若干の指向性の違いだけじゃねーか!なんも珍しくねーわ!女ってだけでチヤホヤされてカルカル満員にしやがって!!(そこ?

・・・落ち着こう。

なんか、キレイなのだ。おそらく話を直接聞いたり行動を目の当たりにすれば間違いなくイタい筈なのに可愛げさえ感じてしまうのだ。満面の笑みを浮かべながらKinKiKidsをぶん回すあだっちーみたいな(好きなアニメの話になると挙動不審になる生駒ちゃんとか松井玲奈でも可)“許される感”みたいのが出てるというか。同じことを男がやったら絶対「キモい」しか言われないだろうに。この前新人AV女優のイベントに行ったとき、女性が2人も前に並んでて驚いてたら自分の後ろにカップルが来てもっと驚いた、あの感じ。そのテの現場に行き過ぎてるせいか、女性の参加者を見ると一瞬(おっ)ってなってミョーに一目置いてしまう、あの感じ。性差的なニュアンスで括ってしまうのはいけないかもしれないが、華やかさや羨ましさ、純粋な気持ちのようなものをどうしても感じてしまうのだ。お金と引き換えに満足感を得るということでは一緒なのに。ズルい。

そして自分の経験も合わせて強く感じたのは、他人から見たら「浪費」にしか思えないことも当人にとっては切実なんだ(ろうな)ということ。「承認欲求」と書くと俗な感じだが、そりゃあ推しの新人俳優がブログで自分のプレゼントしたマフラーを身に着けてくれてたら嬉しくなって予算も上がるだろうし(本文より)撮影会で撮った写真をtwitterにアップしてモデルさんがRTしてくれたりアクティビティが増えたりしたら嬉しくなってまた行こうと思うのだ(自分)。運命を感じてしまったらホストだろうが(本文より)ヘルス嬢だろうが(自分)お金をかけるのは止められない。冷静に考えれば“この投資がいつか報われる”保証なんて微塵もないんだけど、満足感を得る方法やその境地に至る諸事情は人それぞれであり、人の道を法規的に(道義的に、ではない)外れない限り他人にとやかく言われる筋合いもまた、ないのだ。

amazonのレビューを見ると賛否両論(やや非が多め)といったところか。「同人誌のままでよかった」という声が意外と多い気がするが、地下アイドルがメジャーデビューしたらつまらなくなっていくようなものだからそう書きたくなる気持ちは分かるし、同時に出版社がこういう分野に目をつけたことも評価されるべきだとも思う。“インフルエンサー”としてのレガシーメディアやエコシステムの存在はまだまだ大きく、使う価値があるのだから。日本中に様々な形で生息するであろう“趣味で浪費する人”たちにこの本やこういう人たちのことを気付いてもらえたら、とりあえずはそれが一番いいことではないか。その広がりをどれだけすくい取り次に活かしていけるか、小学館の担当編集者氏の役割は案外重要なのである。

余談:前述のカルカルイベントに行こうかと一瞬思い、念のためにともぐもぐさんにリプしたところ、丁重に脅された(言い方←)のを思い出しました・・・